医療法人社団やまと やまと診療所日吉 在宅診療専門

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令和1年7月5日OMC勉強会レポート

2019/07/31

令和1年7月5日OMC勉強会レポート

「高層マンション在住の患者さんへの在宅支援の課題」をテーマにOMC勉強会を開催しました。今回は、やまと診療所武蔵小杉から事例を紹介し、武蔵小杉周辺に多く建つマンションに住む患者さんへの対応について考え、話し合いました。

 

■事例の要約

夫Kさんは認知症・要介護1、妻のYさんはがん末期で、タワーマンションに在住。2人の娘さんは県内の少し距離が離れた場所に居住。

夫Kさん 80代 要介護1

約7年前に交通事故で入院、加療後自宅退院。翌年から性格変貌があり、高次脳機能障害と診断を受け、近医総合病院の受診が始まる。その後、認知症を発症。月1回の受診に奥様Yさんが付き添っていただが、Yさんが末期がんを患い、Kさんの通院付き添いが困難となり、2018年6月から、当院の訪問診療が開始となった。

性格変化はあるものの手足の麻痺はなく、毎日のように趣味である旧跡・名所を1人で巡っていて、時々迷子になって警察に保護されることもあったが、最近はどこかで食事をして帰ってくる生活を続けている。

自由に出かけられなくなることを嫌い、介護サービスを導入することに拒否的で、奥様が入院中は、娘さんが時々様子を見に来ていた。

妻Yさん 70代 介護申請中

2018年3月から咳嗽・呼吸困難で近医受診したところ肺腺がんと診断、化学療法を受けるも脳転移が見つかり、放射線治療を実施した。

2019年1月に癌性心膜炎を再発し、分子標的療法を開始したが効果がなく一旦終了した。脳転移にさらなる放射線治療実施後にめまい・ふらつきが強くなり、2019年4月から緩和医療目的のため、ご主人の訪問診療で介入していた当院が、訪問診療を開始となった。

病院から抗がん剤は勧めない旨の話もされているが、娘さんは諦めておらず、別の分子標的薬を開始。治療後退院したものの、摂食障害で脱水症状となり、再入院となった。

Yさんは自分が動けないことを不甲斐なく思っており、夫のことが気がかりで、看護師訪問時に気持ちが高まった時は「いっそ先に死んでくれたら」との言動も聞かれている。

当院としては、3~4カ所のセキュリティを通らなければ部屋に行けないので、本人やご主人がセキュリティ解除が困難な際に、部屋まで行けないことが不安。。過去にYさんが急変時、ご本人が動けたので部屋まで入ることができたが、もしYさんが動けず、KさんがYさんの異変に気付かなかった時どう対応したらいいか困っている。また、夫が介護福祉サービスをなかなか受け入れてくれないことにも不安を感じている。

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長期的な目線で夫Kさん関わっていくために、地域でどのようにチームをつくっていけばいいか、高層マンションに住んでいる方への工夫を話し合いました。

■共有された意見

【入室困難時の対策について】

ーポストまで行くのにセキュリティを通る必要がなければ、ポストに鍵を入れておく

ーコンシェルジュに現状を話し交渉ー後見人制度を利用し(娘さんが後見人となり)高層マンション側との交渉・緊急時対応の手続きをしてもらうのはどうか

ー家族の了承を得て鍵を預かった事例があった

ーインターホンを鳴らすと自動的に遠方の家族へも通知が行き、家族が解錠できるサービスや、ヘルパーさんが訪問しなくてもビデオ通話などで見守りができるサービスがあればいい

【在宅ケアか施設入所か】

ー高層マンションで独居は難しいので、妻が亡くなり落ち込んでいるタイミングで、施設に入ることを勧める

ー自由に出入り可能な内部サービス付きのサ高住であれば、入居のハードルが下がるのではないか

ー施設に入居した場合、1人で外出するKさんが施設に帰ってこられるかという疑問が挙がった

ーショートステイとは言わず、1泊2日の人間ドックなどの建前で外泊させてみるのはどうか

ー経済的負担が大きいが、住み込みヘルパーさんを打診するのはどうか

ー同様の事例の時、毎日必ず誰かしらが様子を見に行くようにしていた

西先生からは、「マンション住民の方々に、住み慣れた家で最期まで過ごしたいと考えるならば、セキュリティを守りつつどうやって医療者が入っていける体制をつくるか、マンション全体で話し合いの場を設けるよう働きかけをしていくことだと思います」とのことでした。

アンケート結果

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次回のOMC勉強会は、令和1年8月9日(金)です。職種ごとに分かれて意見交換会を予定しています。地域の課題を出し合い、自分たちが今持っている資源は何か、何が足りていないかを洗い出して、この地域がチームとして機能していくために必要なことを話し合います。ぜひ奮ってご参加ください。